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包丁づくり(焼き入れ編)  

包丁づくり(火造り編)で形作った包丁は、そのままでは柔らかく刃物としての機能をまだ持ち合わせていません。熱処理をして包丁に必要とされる硬さを出していきます。

刃物の熱処理はおもに「焼入れ」と「焼き戻し」と呼ばれる工程のことで、高温の状態から何らかの冷却方法によって急冷することで鋼を硬くする方法を焼入れと言います。
包丁に使用する鋼は炭素量が多く、焼入れをするととても硬くなります。焼入れ後そのままでは衝撃等で刃が欠けやすく脆いので、硬くなった鋼を低温で加熱し柔らかさを少し戻す方法を焼き戻しといいます。
この「焼き入れ」と「焼き戻し」は基本的にワンセットで行います。

熱処理を人間に例えるとすれば(変な例え...)真夏の太陽の下で頭も体も熱さで伸びきっている状態で、いきなり冷たいプールに飛び込むと体は硬直しますよね。この例えが焼き入れです。水に入って体が硬直し、冷え切って寒さで震えてるところ日光浴をするとすこし体の硬直が和らぎますね。これが焼き戻しです。
実際に鋼の組織の状態として考えると理屈はぜんぜん違うし乱暴なたとえですが、感覚的な例えとしてはそんなに間違っていないと思います。冶金学がまだ無かった大昔の人はこんな風に考えていたのかもしれません。

鋼は鉄に炭素が添加されたもので、鉄に炭素が混じることによって焼きが入る鋼になります。
ですので、炭素の入っていない鉄を急冷しても焼きは入らず硬くなりません。(表面を高速で削ったりすると研磨熱で応力が残り表面が硬くなることはあります)


熱処理の仕方は製品によって方法も様々ですが、基本的に焼き入れは鋼を高温の状態から急冷することで硬くなります。その方法として、油冷、水冷などがあり、高温の鋼が接触するものによって冷却速度が異なり、硬さが変わります。
早く冷えるとより硬くなり(水冷など)ゆっくり冷えると低めの硬さになります(油冷など)

また、赤くなった鋼を空気中で普通に冷ますことを空冷「焼きならし」と言い、加工に伴う応力が除去されます。
さらに、空気の層を多く含んでいる断熱材のような役割をする「灰」の中などでゆっくり冷ますと鋼は柔らかく加工しやすくなり、このような冷却方法を「焼きなまし」と言います。

包丁は刃が薄いので、強度を保つためにわりと硬めの焼きが入るような方法を設定します。



焼入れは木炭に鞴で風を送り加熱して、水の中に入れて急冷します。
水と言っても、焼入れの適温はぬるま湯で、焼けた鉄片を砥舟(水槽)の中に入れて水の温度を少し上げます。

焼いた鉄片を入れ温度を上げる
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焼き入れで刃の形状を固定する前に、微妙な歪みの有無を確認し整えます。
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焼き入れ温度は、温度が高すぎると鋼の組織が粗くなり、ポロポロ欠けるような刃になってしまいます。あまり極端に高温だと冷やした時に割れてしまいます。逆に温度が低すぎると焼きの入らない部分ができて刃物としての機能を持たなくなってしまいます。どちらにしてもやり直しがきかない一発勝負です。
加熱の仕方にムラがあると、冷え方にもムラが出て歪みを生じますので、全体ができるだけ均一な温度になるよう加熱し、一気に水の中へ入れて冷やします。
 

魂が入る瞬間
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焼入れ後はとても硬くなっていて、冬場など手が滑って硬いものの上に落としたりするだけで割れてしまうこともあります。
焼入れ後、鋼に少し粘りを出すために焼き戻しをします。
焼き戻しは火の上で炙ってゆっくり加熱します。加熱温度は包丁の上に水滴を落とし、水の弾け具合で焼き戻しの温度を見分けます。


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温度が均一になるように加熱する
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水滴を落とす
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熱処理完了。
このあと歪みを取りながら、刃を付けていきます。
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現代では焼入れのときに、温度を一定に保つ装置を用いることが一般的です。
一人で細々とやっている私のような鍛冶はかなりアナログな方法で作業をしています。
焼入れは、刃物に魂を入れると表現されることもあり、焼きを入れた瞬間にその刃物の性質が決まってしまう肝心な作業なのでそう呼ばれるのだと思います。失敗をすると数時間の作業が水泡と帰してしまうので緊張の一瞬です。
その肝心な作業を人間の感によって行うことで魂を入れるという表現になるのではないでしょうか。
誰がどのタイミングでやっても出来てしまう熱処理は製品にバラつきが無く無駄が無いのもよくわかりますが、なにか面白みに欠けると思うのでこのままアナログな熱処理を続けていこうと思っています。
世の中に少しはアナログなものづくりが残っていないと、個人がものを作れる環境はどんどん減ってしまう。
個人でも、ものづくりは出来ますし、結構シンプルな設備と人の技術と知恵で刃物はつくることができます。




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